「金になりそう」な「西部劇」を「アイディアいただき」で作り上げるのがマカロニ・ウエスタンの神髄だとすれば、そんな
マカロニ精神を見事に具現化した一本が『
ジャンゴ対サルタナ』[1970]だ。
「サルタナ」とは、アンソニー・ステファン主演のマカロニ・ウエスタン『砂塵に血を吐け』[1966]に登場した悪役の名。あいかわらず派手さのない表情・演技で目立たないステファンに対して、「サルタナ 残酷な支配者 自らの掟を残虐に下す ムチは彼の舌 銃は彼の口 憎しみは彼の神」と予告編で紹介された
キザでクールな殺し屋サルタナのカッコよさは観客の心をがっちりつかんだ。演じたのは旧ユーゴスラヴィア(クロアチア)出身で熱心な創価学会信者のジャンニ・ガルコ(ジョン・ガルコ名義)。おかげで、死んだはずのサルタナは生き返り、ジャンニ・ガルコは『さすらいの盗っ人野郎・サ
ンタナ』[1969](テレビ放映時にサルタナを間違って表記したらしい)、『サルタナがやって来る~虐殺の一匹狼~』[1970]など続けて5本の「サルタナ」シリーズに主演した。日本では劇場公開されたことがないのでイマイチ無名だが、
ヨーロッパ、特に西ドイツ・北欧での人気は大変なものだったらしい(ちなみに、ややこしいがジャンニ・ガルコは『二匹の流れ星』[1967]で「ジャンゴ」を演じている)。
というわけで、日本映画『用心棒』[1961]」を西部劇に翻案したのが『荒野の用心棒』[1964]なら、
こんどは『キングコング対ゴジラ』[1962]を「ジャンゴ」と「サルタナ」でウエスタン対決させようじゃないか、と企画された(のかもしれない)のが『ジャンゴ対サルタナ』[1970]だ。もちろん、誰にも許可などは取っていないので、
今まで日本では一切公開されていなかった激レア作だ。